花山周子 『風とマルス』

 

窓際の埃が浮ける空間にしゃがめばわれより埃たちたり

君の顔、夜の光に照りているその健康にわれは見とれる

かなしさは眠たさになり眠りたり眠りて悪夢に怒鳴りて眠る

地雨降る傘の下より見上げおり芯まで白い莢蒾(がまずみ)の花

ぎっしりと雨降る窓に畳まれた時間だわれは正座している

 

第二歌集。二〇〇七年から二〇一〇年まで三年間の作品を収める。作風は結社そだちの作風とここ二十数年で急速に広がった口語の作風とのハイブリッドと言える。花山自身による異素材を組み合わせた装丁とその作風とがどこか通じ合う。第一歌集もそうだが、短歌表現への向い方のシンプルな美しさが際立つ。かぎりある命をささえ愛おしむ歌たちである。    ­(嵯峨直樹)

2015.4 未来 「今月の歌」