2013年11月

新しい廃院は街に孤立して窓に明るい陽ざしを返す

西の陽の深く射し込むバスの席はだかの腕は汗を纏(まと)って

暗緑に光れる宇治金時の山を崩して寡黙な二人

尾てい骨の窪みしずかに眠る人かすかに響く川の音を聞く

糸口を知る、高体温の耳裏に息づくものがあると知らせる

寂しみを習慣として保つ夜は桃の薄皮に指湿らせる

平地部を覆える雲の芯暗し雨後のごとくに人はつやめく

何ひとつ決着せずに死んでゆくトレッドミルを走る生き物

しめやかに汗は流れてシャツに入る大吊橋を渡りいる頃

夕雲の裂け目に夏の茜溢れ、かく大過なき習慣にいる