冬のたましい 

たましいの輪郭すこしささくれて。暗く流れる川をみている

8階の小部屋でランチの封を解くチキンの匂いに少し落ち着く

あたたかな乳房に耳を圧しつけて寝ている人の心音を聴く

水の音するどく部屋に響いてる ゆめの神殿みたい壊れる

たましいの底部の傷を探りだす手つきで後ろから抱いている

その名前だけはセカイの底にある はるかな夏に開く向日葵

『美志』1号 2011年