月代9

いくぶんか濁りを帯びた月光の苦みに気づいていない口づけ

気づいてはいない頬笑み草むらの密な処に秋雨が差す

雨つぶの光またたくほんのりと明るく広い秋空のもと

おそ夏のさわだちのなか何となくひんやりとした手を重ねあう

しろがねの心音のごと澄みながら虫の音ひびく暗やみの家

(2018年9月ごろ、未発表)