Category Archives: 2014年の結社誌の作品

2014年9月

 

オロナミンCの茶色いガラス瓶初夏の車中に光を散らす

肌の上に浮き出る汗のきらめきにラメ混じらせて初夏のひと

不安定なかたちの背中しろく浮く闇にたやすく交じる雨音

おごそかに糸引く別れあった駅あっさり通過する夏が来て

 

 

 

2014年6月

 

君は君のイエの匂いの沁みついたレギンスの脚すっと伸ばして

隣り合いバスの後部に座りおり走行音を身にひびかせて

床の間に「慎重」二文字の掛け軸を飾って日々を暮らすべき人

 

 

2014年5月

 

綿菓子のやすらかな張り部屋中を占めて明るい熱を吸いおり

屈託をやや強調し人去りぬ致命的ではない誤りなれば

スーパーの袋が音を立てて飛ぶ煤けた雪の残る国道

みぞれ雪の底に愛をあやつれる幼子の手の輝きてあり

男らは疲れた臓器揺らしつつ駅の階段駆け下りてゆく

温みいる臓器を冬の駅前に運び牛丼をかきいれており

牛丼の並つゆだくと生卵。届くまでを待つマスクを下げて

窓ガラスの汚れのように視野に在るぼやけた悪の向こうに花野

誰彼の余熱ばかりの小部屋たちそのひと部屋に冬陽はとどく

 

 

 

 

2014年4月

 

人生に陥没地ある人びとが集いて寂しく栄えていたり

存在の火力を下げてどんづまりの雪の家屋に父は息づく

細やかな雪にまつ毛をしならせて歩みいるらん午後5時の街

やわらかに肉ふるわせて尿をする音を聞きおり冬の寝床に

回送車、そう回送車軽い音たてて郊外の車庫へ向かいぬ

ほつほつと綻びがでてきているがほつれの先にも日差しは載って

 

2014年3月

 

スカートの歩幅に熱を纏(まと)わせて女は橋を渡ってゆけり

街川にうっすらと張るたましいは強い夜風に細切れになる

マンションに二人こもって蟹をくう 湯よりはみ出す赤い脚たち

月光のあまねく照らす寝室に女の咳の低音ひびく

違和のある表情のみが残りおり人肌とけた闇の芯として

瓶の底に白い輪残し消えた人 台所には切り身の匂い

 

 

漏れの国 2 ( 2014年2月)

 

族あがりの人と平行線のまま眺める古いプロパンガス屋

店頭に積まれたゼリー透きとおり桃の欠片(かけら)を宙に浮かべる

潰れかけのシュークリームを守りつつ少女の坐る駅の階段

紫のスウェット上下と茶の髪と。僕ら同じであった日々のこと

自転車の灯り連なる秋の夜の夕やみ人の臭いは満ちて

融けながら暗部を軽く言い合えば体液すこし漏らしてしまう

自転車の燈火のゆらぎ連なって常世の湿地帯へと続く

 

 

 

漏れの国 1 ( 2014年1月)

 

<空車>という電光赤く光らせてタクシー巡る台風の夜

傘に附く雨つぶつぶと増えてゆく通学児童の喉あかるくて

コーンスープの黄色いかけら夢をみるように少女は殺されていた

朝の水こぼして新聞濡らすひと周辺視野で気づいてはいる

きんきんに冷えてる水と錠剤とシュークリームを持って火星へ

残尿がじんわり漏れて温かいあべのみくすに跨る夜更け

とろとろのスープに融けていたのだが誰のスプーンの冷ややかな違和