Monthly Archives: 1月 2019

歌集からもれた歌(神の翼)2

先日あげた「終わりの日」というタイトルは後から修正したもので元は「世界消灯」という一連だった(更に前の原稿を見つけて知った)。
実際は「わらわらと仮想の僕が走りだすしなるペニスを振りまわしつつ」という何やらテンションの高い歌から始まる一連で、最後は、「世界消灯、世界消灯、アナウンス聞こえくる朝制服を着る」という歌集に収めた歌で終わっている。
歌集に入れるかどうかをこの一連だけは岡井さんに聞き、入れなくていいんじゃないか、と言われた覚えがある。冒頭の一首が原因だったのだろうと思う。

同系統のものには、「1999年7の月」がある。同世代になら分かるかの予言をネタにしている。

1999年7の月

さしこみ口にさしこむものが見つかってレベルが上がる上ガル日がくる

千年を待っていました靴下の片一方が降ってくる日を

 

 

歌集からもれた歌(神の翼)1

終りの日

建物がゆっくり倒れてゆくまひるきれいな風が眠りを誘う

システムの飛ばした白いセスナ機が僕の頭上をばくぜんとゆく

海ぎわの発電施設が放射する無色の毒が身体を洗う

破損した腿の中から血の液があふれ出ているまだ生きていた

歩くたび液が出るから階段を汚してしまう傷ついた人

水くんで水くんで人にかけているまだ生きているかも知れなくて

しんでいるひとらの上でみぎ→ひだり防犯カメラの確かな軌跡

標識の矢印のさす方角が僕の歴史のゆきつくところ

老人は影をなくしてしにましたペデストリアンデッキの上で

昼ごろは晴れていました夕方は晴れていました大災害の日

太陽はくりかえし来て表面を一定量の光で満たす

あくる朝影のきわだつ瓦礫から石を拾ってポケットに入れる


自身の歌を読み返している。

歌集からもれた歌(半地下)2

盛夏の手紙

体温は葡萄のいろの室内に確かにあった 指を離すな

一日を雨が濡らしていたらしい胸の底部の湿りに気づく

身体は闇に閉じかね濡れている一つの愛を遂げたる後も

初出「美志 復刊2号」


3首目は
下句が定型的な表現になっている。これは意図しているが、問題は重すぎる事だった。
こういったコメント付きなら発表したい歌。

歌集からもれた歌(半地下)1

ささくれ

たましいの輪郭すこしささくれて。暗く流れる川をみている

その名前だけはセカイの底にある はるかな夏に開く向日葵

8階の小部屋でランチの封を解く チキンの匂いに少し落ち着く

くちづけに次ぐくちづけで現実を防いでいると月がしろいよ

たましいの底部の傷を探りだす手つきで後ろから抱いている

放尿の音がするどく響く部屋 非常にふかく繋がった後

どうぶつの匂いが一瞬きつくなる髪をいじって遊んでいると

口中の蜜を探っている舌のぬくみを思う雪ふる夜に

 

初出「美志 復刊1号」


どんな歌を佳い歌とするかは、その時その時でちがう。
露悪的になる時の素直な感情のうごきを最近は嫌いじゃない。
しかし、数年後は、また違うかも知れない。

2018年12月

コスモスのかたち溢れる ゆれる血を結んだような小さな予感

満月はしろく濁って身じろぎのたびにかすかな息をこぼした

あかい夕 白い手足の絡まりを活けて円かな月球うかぶ

手垢のついた表現について2

自身について考えるために書く。

海音にふたりの部屋は閉ざされてもういい何も話さなくても

率直にいうと、自作でありながら、私はこの歌が好きなのだ。
こういった瞬間は、恋愛の只中にあれば誰しも経験する事だと思う。ある甘やかないっとき。
それでいて、シチュエーションが出来過ぎているから、現実には無かった風景のようでもある。
こうあって欲しいが、永遠に(死ぬまで)かなわない風景。

もう少しこの世界に拘泥して描き切っておきたかった。