晩夏(おそなつ)の血の色の夕 鳥たちは影を交えて暮らしを編めり
血の中に囀(さえず)りながら関係の層を編みゆく幹枝を軸に
ふち暗き積乱雲もくきやかに何と明るき幻滅の街
赤ん坊の喃語(なんご)は綿の如く浮く夏の終わりの蝉声の中
安っぽき照明の下打ち解けてスープきらめくうどん啜れり
落蝉を蹴飛ばしながら通学の子らは命の匂いを洩(も)らす
体温に近き風吹くこの夕べ桃二個分の重みをはこぶ
潰れたる月うっすらと光る夜リュック背負った家族連れおり
みず色の「ガリガリ君」の空袋路面を擦り舞い上がりたり