よく慣れた背中、太股、足の指。触れると今日も寝入ってしまう
靴下も脱いでしまえば薄闇にさだまり難し二人の身体
倦怠は愛を優しくするものか寝入った人の髪を撫でつつ
深みへと滑らせてゆく指先は怒りのような力を秘めて
たましいの宿った肉の突端が人の気配にひどくざわめく
水中に手を潜らせる細胞の欠片を集めるようなしぐさで
きんいろの栗のごはんを盛りながら待っているのは家のひとたち
黙々とみかんの皮をむいている今日は小さな失望があって
輪郭がゆんわり混ざる肝心なところでふかくつながる秋夜
ささやかなブログとはいえこうして発表するのは、歌集から外しておきながら、根っこの処では、これらが悪い作品とは思っていないからだ。
しかし、仮に自分以外が一首目のような作品を出してきたとしたら、良い顔をしないと思う。
他人がこういった作品を出してきた時、自分が何を言うかも見当がつくから、収録を避けたのだろう。
思い入れの深い歌だ。
どう受け取られるのであれ、作者の思い入れの深さだけは伝わりそうだ。