ものの翳くらく匂える教室に駆けているひと砂金こぼして
はつ夏の砂金のようにきららかな髪なびかせているはずのひと
薄墨の雲を遥かに張りながら海ばらとうに死んでいるから
海原は鈍くきらめき時々は君を笑かす仕方知ってる
純水のなみだは散って優しげな墓を成しゆく草むらの奥に
身の熱を甘く遺してあかい夕 髪の筋目にひかり編まれて
あかい夕 くらい血汐にひたされてここにいて人よ清い息づき
あかい夕 翳に囲われしらしらとふたりは優しい墓としてある
ほそい手に鉱脈みたく埋まったしら骨たどる目を覚ますまで
たましいの擦れあうたびに散らかった砂金さみしい夏のうす闇
たましいは擦れあうからもうつらい散った砂金を眺めるばかり
(2018年7月ごろ、未発表)