2018年6月 わたしの第3歌集「みずからの火」を上梓しました。
みずからの火
【みずからの火・収録歌】
ひかる街のけしきに闇の総量が差し込んでいる 空に月球
しっとりと感情帯びて内がわへ腐りはじめる黄薔薇も家具も
濃霧ひとりオリジン弁当に入りきてなすの辛みそ炒め弁当と言う
生きのびて来た知恵と云い各々のたこ焼きの中とろとろの熱
地下道のコンクリートに罅深く或る情念のごとくに栄ゆ
半地下
【半地下・収録歌】
しらじらと無瑕疵の月は照りており関係の根は底へ伸びいて
店頭に積まれたゼリー透きとおり桃の欠片(かけら)を宙に浮かべる
美しくカーブしている肋骨の内がわに建つ薄明の城
愛されている耳の裏見せながらしずかに水を飲んでいる人
族あがりの人と平行線のまま眺める古いプロパンガス屋
神の翼
【神の翼・収録歌】
熱心に君は何かを話してる 幼女のように髪しめらせて
海音にふたりの部屋は満たされてもういい何も話さなくても
ため息のしめり方まで似通って たとえばキスの終わったあとの
空想は止めようがない 夜の空昼の自転車朝のハチミツ
単純でいて単純でいてそばにいて単純でいてそばにいて