この人言葉の選びかたがすごく丁寧。
この人言葉の選びかたがすごく丁寧。
おんがくのように降りつぐこな雪を指さしながら笑うひとたち
損傷した果実のような気がかかりが冬の夕べに約束される
眼底の少しさみしい閃きは萌黄のビーチガラスみたいで
ガラス戸に薄く映っているひとは本をひらいた 髪かきあげて
雪みちに浅い足あとつけながらメロンソーダのグミ分けながら
唐突にふたり笑った 甘い粉にまみれた指をピンと開いて
みるく色に空はこごって初めての雫で頬を濡らしたらきみ
幾つもの色を重ねてきみっぽい準急電車の引き裂く向こう
星々が重いほてりを示すからとても死んで欲しいキス
(2019年11月ごろ、未発表)
火のなかの昏く溜まった血のなかの淡い骨組みゆらめいている
ベランダのか細い柵に赤茶けた錆がさかえる今日のひぐれも
傷ぐちがすこし開いているようで日暮れのあかい街並みのよう
葉をおとす木立の道を肩ならべ歩いた 皮膚をこわばらせつつ
自販機の取り出し口に落ちてきたペットボトルにゆれている水
あお空にほどけつづけるわた雲の消え失せそうな部分は光
淡いかげわずか重なっているところ予兆のように密度が濃くて
美容院のガラスにうつる車たちときたま銀をひらめかせつつ
(2019年11月ごろ、未発表)