冬空の白の偏り在るところ裂傷のごと陽は烈しかり
この冬の愛憎憎に転がれり一夜で嵩(かさ)を増している雪
憎悪とは完璧な愛 対岸の私と銃を撃ち合う遊び
愚かなる自然になってしまうだろう二人並んでジーンズ脱げば
日常が猛スピードで過ぎて行く今日は二人は半地下にいる
戯れる唇の間を流れゆく水、愚かなる水というもの
よく慣れた背中、太股、足の指。触れると今日も寝入ってしまう
恥知らずではない二人口づけに飽きた頃には愛を言い合う
言い合って通い歩いた道のりに小公園は寂れていたり
隈も無く馴染んだ体屈託と言えばなべて赦すのだろう
雪うすく路面に積る 表側ばかりか裏も妥当なばかり
倦怠は愛を穏しくするものか寝入った人の髪を撫でつつ
『美志』3号 2012年