じりじりと輪郭灼けている人をはるか間近にみはるかす昼
みひらいた空にみられているとしてゆるい速度に定まるこころ
朝夕をしたしく愛でて純粋になったあなたは関わりをもつ
粘土のたかい雲かたまって心とかあまい匂いのものがきざした
かの日からみひらきぱなし何一つ見ないつぶさにみはらすために
金属の定まり方に定まったかたちにぎんの硬貨をいれる
かみあきたガムのはりつく自販機の硬貨投入口のぎんいろ
はなされて切り立つ胸よなまぬるい風がとおりを今日もみたして
崩落の予感にひらく内面をブルーシートで淡く覆った
夕雲は粘度をましてゆっくりと動きをとめたとてもしずかに
漆黒の悪意があると言いつのる無害な日々を車があおる
ぎんいろの足場くまれた建て物のブルーシートは街になじんで
心という瀟洒な趣味を持ちながらひとがまどろむ夜にみひらく
あくがれて鋭い影を見せながらアスファルトの路ひくく低く飛ぶ
くりかえす取り返すからあったはずはるか日なたに綾なすかたち
血脈の入り組みのなか息ひそめあまりに長い棺であった
疼痛のひくい持続に耐えている総て剥きだすすいっときがくる
はらってもさしのばしくる甘い手よ屋根のかすれてかがやかな家
破裂する音はかわいてとの曇る空気にとけてはやく散った
くりかえし瞬間はある 再生の予感にはつか触れるひとびと
元原稿をみたら、タイトルは「ぎんいろ1」となっていた。
美志掲載のタイトルはあからさまなので歌集に収めるときに変えるかも知れない。