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【お知らせ】第3歌集「みずからの火」について

2018年6月 わたしの第3歌集「みずからの火」を上梓しました。

みずからの火

【みずからの火・収録歌】

ひかる街のけしきに闇の総量が差し込んでいる 空に月球

しっとりと感情帯びて内がわへ腐りはじめる黄薔薇も家具も

濃霧ひとりオリジン弁当に入りきてなすの辛みそ炒め弁当と言う

生きのびて来た知恵と云い各々のたこ焼きの中とろとろの熱

地下道のコンクリートに罅深く或る情念のごとくに栄ゆ

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半地下

【半地下・収録歌】

しらじらと無瑕疵の月は照りており関係の根は底へ伸びいて

店頭に積まれたゼリー透きとおり桃の欠片(かけら)を宙に浮かべる

美しくカーブしている肋骨の内がわに建つ薄明の城

愛されている耳の裏見せながらしずかに水を飲んでいる人

族あがりの人と平行線のまま眺める古いプロパンガス屋

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神の翼

41d-P+U2GXL

【神の翼・収録歌】

熱心に君は何かを話してる 幼女のように髪しめらせて

海音にふたりの部屋は満たされてもういい何も話さなくても

ため息のしめり方まで似通って たとえばキスの終わったあとの

空想は止めようがない 夜の空昼の自転車朝のハチミツ

単純でいて単純でいてそばにいて単純でいてそばにいて

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半地下

 

冬空の白の偏り在るところ裂傷のごと陽は烈しかり

この冬の愛憎憎に転がれり一夜で嵩(かさ)を増している雪

憎悪とは完璧な愛 対岸の私と銃を撃ち合う遊び

愚かなる自然になってしまうだろう二人並んでジーンズ脱げば

日常が猛スピードで過ぎて行く今日は二人は半地下にいる

戯れる唇の間を流れゆく水、愚かなる水というもの

よく慣れた背中、太股、足の指。触れると今日も寝入ってしまう

恥知らずではない二人口づけに飽きた頃には愛を言い合う

言い合って通い歩いた道のりに小公園は寂れていたり

隈も無く馴染んだ体屈託と言えばなべて赦すのだろう

雪うすく路面に積る 表側ばかりか裏も妥当なばかり

倦怠は愛を穏しくするものか寝入った人の髪を撫でつつ

『美志』3号 2012年

 

冬のたましい 

たましいの輪郭すこしささくれて。暗く流れる川をみている

8階の小部屋でランチの封を解くチキンの匂いに少し落ち着く

あたたかな乳房に耳を圧しつけて寝ている人の心音を聴く

水の音するどく部屋に響いてる ゆめの神殿みたい壊れる

たましいの底部の傷を探りだす手つきで後ろから抱いている

その名前だけはセカイの底にある はるかな夏に開く向日葵

『美志』1号 2011年