社会を題材にした歌2

社会を題材に短歌をつくるのは年々難しくなっていると思う。
特に時事的な問題はそうで、ほんとうにむずかしい。
作品のなかで怒りを、読み手に届くかたちで入れ込むのがむずかしい。

ビートルズのNow And ThenのMVをみた。
もう何回もきいている。MVも基本的に出来がいいと思う。
MVのニコニコしているジョンレノンは魅力的だが、そういうジョンレノンが受け入れられる時代なんだろうなとも思う。
始終ニコニコしていてかわいい。まあかわいいからいいか。

そういえば、対象を批判するのに、わざわざ一度、対象をほめてから、批判するというのがあって、最近は特に多い。
その方が受け手の機嫌がとれるからで、理にかなっている。
しかし、いくら目的のためとはいえ、ほめるなどもってのほかという怒りもある。

大災害の日という一連をつくったことがあったの思い出して、最近はこの方法からヒントに社会を題材にした歌をつくっている。

大災害の日

建物がゆっくり倒れてゆくまひるきれいな風が眠りを誘う

システムの飛ばした白いセスナ機が僕の頭上をばくぜんとゆく

海ぎわの発電施設が放射する無色の毒が身体を洗う

破損した腿の中から血の液があふれ出ているまだ生きていた

歩くたび液が出るから階段を汚してしまう傷ついた人

水くんで水くんで人にかけているまだ生きているかも知れなくて

しんでいるひとらの上でみぎ→ひだり防犯カメラの確かな軌跡

標識の矢印のさす方角が僕の歴史のゆきつくところ

老人は影をなくしてしにましたペデストリアンデッキの上で

昼ごろは晴れていました夕方は晴れていました大災害の日

太陽はくりかえし来て表面を一定量の光で満たす

あくる朝影のきわだつ瓦礫から石を拾ってポケットに入れる

2000年ごろの作品だと思う。歌集には師から賛成されなかったので入れなかった。