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ゴミ死(あまい散かり)

室内はあかるい水に濡らされて青いデジタル文字のぎとつき

浴室の黒くつやめく鏡面に熱おびた眼がときおり映る

ひと肌を血のふくらみがおりてゆく光にかたく結ばれた夜

暗闇の鏡の映す暗闇を見つづける眼を見てはいけない

血の筋のきんいろ腕にはしらせてお風呂場ゴミが笑っていたよ

死んでいるゴミの微かなみじろぎはパイプベッドの節きしませる

死んでいるからだが白くうずくまるまひるま冷えたパイプベッドに

きみの踏むコアラのマーチこなごなで世界はなんてあまい散らかり

病室のまぶしい白に護られて近ごろとても死んでいるなら

冬の陽を汚しつづけるガラス窓 手首に甘い包帯まいて

痛ましいひかりが白くこもる雲 濡れた市街の真上に張って

春雨にかたち崩れて花びらの色を濃くする岸辺のさくら

細密に綿のあつまるタンポポを雨が損なう深くはいって

血のかおるやみ夜はげしい衝撃で割れた光が今日も張りつく

ももいろに染まる夕雲おりてきてほそい気道をおっとりふさぐ

おおよそは不完全でいい月球は春の夜空にしらしらと照る

薄い影とても濃くなるさわさわと視界のすみに鳥がさわいで


美志21号の冒頭作品になったので発表時のタイトルは少し穏当に「あまい散かり」にした。
ここ数年取り組んでいる作品群の一部

 

最近聴いている曲

仕事中や車で流している曲。
Prefab Sprout – Electric Guitars

「 アンドロメダ・ハイツ」というアルバムの曲。
アルバム自体もロマンティックさが良い。恥ずかし気もない。
好きなようにやったのだろう。

pops11

おんがくのように降りつぐこな雪を指さしながら笑うひとたち

損傷した果実のような気がかかりが冬の夕べに約束される

眼底の少しさみしい閃きは萌黄のビーチガラスみたいで

ガラス戸に薄く映っているひとは本をひらいた 髪かきあげて

雪みちに浅い足あとつけながらメロンソーダのグミ分けながら

唐突にふたり笑った 甘い粉にまみれた指をピンと開いて

みるく色に空はこごって初めての雫で頬を濡らしたらきみ

幾つもの色を重ねてきみっぽい準急電車の引き裂く向こう

星々が重いほてりを示すからとても死んで欲しいキス

(2019年11月ごろ、未発表)

淡い骨組み

火のなかの昏く溜まった血のなかの淡い骨組みゆらめいている

ベランダのか細い柵に赤茶けた錆がさかえる今日のひぐれも

傷ぐちがすこし開いているようで日暮れのあかい街並みのよう

葉をおとす木立の道を肩ならべ歩いた 皮膚をこわばらせつつ

自販機の取り出し口に落ちてきたペットボトルにゆれている水

あお空にほどけつづけるわた雲の消え失せそうな部分は光

淡いかげわずか重なっているところ予兆のように密度が濃くて

美容院のガラスにうつる車たちときたま銀をひらめかせつつ

(2019年11月ごろ、未発表)

月代9

いくぶんか濁りを帯びた月光の苦みに気づいていない口づけ

気づいてはいない頬笑み草むらの密な処に秋雨が差す

雨つぶの光またたくほんのりと明るく広い秋空のもと

おそ夏のさわだちのなか何となくひんやりとした手を重ねあう

しろがねの心音のごと澄みながら虫の音ひびく暗やみの家

(2018年9月ごろ、未発表)

ポップス0  

海原に水の破片の散らかって乱反射する いて欲しいひと

海原の軽いかがやき逆光の君らしきもの抱きとめている

きらきらと凍った涙光らせて無表情なひと手をつなぎたい

こわばった海の芯からあふれ出てもう安らかな闇夜がきたよ

(2018年末ごろ、未発表)