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2013年9月

明太子の粒子を春日に光らせてパスタからめるうつくしい人

繊月(せんげつ)は赤みを帯びて浮かびおり平坦地続く郊外の闇

身熱(しんねつ)を帯びた気体に包まれて細やかに花咲くを見ている

曇天に霧らうがごときヤマザクラ点々として山々昏し

たましいはひそかに燃焼しておりぬ泥み流れる夜の水音

2013年8月

肩越しに目配せされる一瞬の華やぎノブを静かに廻す

屋根よりは高く泳げる鯉のぼりパチンコ屋より見下ろしており

方形の郊外店舗は向かいあうTSUTAYAのブルー、ユニクロの朱

滑らかにエンジン音鳴らし間断なし日暮れの車道を行く乗用車

肉体の深処震わす感官の小暗き門は入り組みていて

冷房の風を素肌に当てながら誇るもの無き互いを晒す

すべらかな妹石の裏側にひったりと添う地面があって

2013年7月

蒸し返す、蒸し返さない、蒸し返す。花占いに黄薔薇むしって

黒々とおとこの子の鯉上げられる黄白色のあかつきの空

しろがねの銀河に浮かぶ春の夜の文学趣味の言の葉は美し

2013年6月

あなたとの関係のうちどの層で呼びあったのか 淡淡と雨

ひたひたと路面を濡らす雨水のぬくさのような会話に慣れて

自意識の芽生えはじめの頭頂にハチミツ色の春の陽が差す

 

2013年5月

情熱の余熱のように浮かぶ月 遊具の影は黒く盛り立つ

冬天に事を起こした痕のごと繊月白く照り続けおり

薬指の関節にまで力こめるカシスの苦み兆し始めて

唐突に火中の栗に成っている 炎の向こう人の生活

夕刻の冷気を連れてきた人はファンデーションの匂いをさせて

 

2013年4月

開ききるこころの浅瀬きららかな光の綾を返し続ける

経験に汚れて迂回する雪の下層に昏(くら)い水滲みだす

粉塵をまとう残雪 毎日を清らかならぬ意思をもて生く

残雪の日毎に煤けゆく様を関わりなしと今は思わず

愛情を脂肪深くに堀り当てる大岡川の水ゆるむころ

 

2013年3月

社会的役割からくる自負心をブレンドしつつ生き急ぐのか

幻を喰いあう二匹の動物が横たわっている昼のシーツに

駅前の坂を二人で下りてゆくさかんに燃える夕雲の下

泣きながらとてもゆっくり殴りあう、ような世界にもう長くいる

ひと一人の規模を侮る言葉尻、首都は臓器のようにつやめく

わが肉の奥なる異音、あわ雪に降られて人を待てば鋭し

2013年2月

久々のキスで確かめられている奥歯の治療の進行程度

冠を被せた奥歯の一列を《いい気な愛》に確かめられる

紫蘇の葉は鬱血の色して群れる記憶に殴打の跡を持つひと

男児ひとり青年めいて来る頃のとおさんにだって人生はある

2013年1月

清らかな雨降る下で憎み合う緑の傘を二人で分けて

暗やみの熱い身体 たましいを確かめるよう抱きしめてゆく

手を伸ばし握りあいたる一瞬に命くまなく知り合っている

大いなる手が現れて体ごと新たな壁に撃ちつけられる

濁水のはるかな底に真実の形を模した真実がある

チュニックの下に大方隠された愛の歴史と内臓脂肪

今脱いだ下着が放熱するソファ 浅い水辺でしばらく遊ぶ